着ぐるみの恋
ったく、情けねぇ…。

月子、悪かったな、何話せばいいか…わからなかったんだよ。

恋の免疫はゼロに等しい修二…胸がドキドキ、顔がニヤニヤ…。

修二は周囲の視線を感じた。

と…従業員達が…皆不思議そうに…首を傾げていた。


その夜も…またもや、修二はカトレアに入って行った。

恋の神が指令を出す。

神につかえる修行僧は、喜んで服従する。


修二を見たボーイは、昨日の態度とは正反対に、ニコニコフェースで飛んで来た。

当然だ、カミュ・ロワイアルをキープした客だ。

皆、興味津々…昨日、閉店してからボーイ達の間では、噂の渦になっていた。

「修二さん!」

2日続けの来店に…月子は、ただ、ただ驚くばかり。

修二は照れ笑いをした。

思いが上昇するほどに、言葉がなくなっていく。

しどろもどろの二人の会話…恋に落ちたこの席に、商売はもう無縁の世界。

ホステスを忘れた月子と、客を忘れた修二。

今、この時この席が、店内で一番甘さに溢れ、一番宙に浮いていた。

と、その時、5人連れの客が入って来て、修二の前を過ぎていった。



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