着ぐるみの恋


 ガァッシャーン~

グラス類は倒れ、割れた。

美咲の口からは血が……前歯が折れてしまった。

「どうしたの!何が、あったの?」

ルミ子ママが飛んで来た。

美咲は泣き崩れている。

ルミ子が言った。

「何があったか知らないけれど、修二さん、暴力はいけません。他のお客様もいらっしゃるので、後日話し合いましょう、今日の所はお帰り下さい」

ルミ子が美咲を抱きかかえる。

口から血を流した美咲が、修二を睨んだ。

「訴えてやるからね!このままでは済まさないから!」

店内の騒々しい雰囲気に、月子は慌てトイレから出て来た。

と、修二がスタスタと出口に向かって歩いて行くとこだった。

「修二さん!」

月子は呼んだ…が振り返る事もなく、修二は姿を消した。

追いかけようとした月子を制したのは、ルミ子だった。

「月ちゃん、修二さんは本日限りより、カトレア出入り禁止です。 美咲ちゃんを殴ったのよ、今日の飲み代と慰謝料は後日、請求するとして、今後お店には呼ばないでちょうだいね」


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