着ぐるみの恋
はだけたゆかた姿で、月子は歩いた…疲れ果てるまで…。
もう歩けない…タクシーに乗り込み、部屋の前に着いた時、携帯が鳴った。
ディスプレイに修二!
嘘、修二さん? どうして?
「はい、もしもし…」
「月子?俺……久し振りだな、今、店行ったんだ、で、帰ったって聞いたから…大丈夫なのか?」
「……えぇ、大丈夫よ。少し風邪気味で、それで熱っぽくて…それだけだから…」
月子は感極まり、声が震えていた。
「そっちまで行くよ。部屋には上がらない、マンションの下で待っててくれ、渡したい物があるから、30分後に」
「…わかったわ…ありがとう…ありがとう…」
何が有り難いのか、月子は何度も、ありがとうを繰り返した。
話の折りに、修二は月子のマンションを知っていた。
が、一度も来た事はなかった。
修二さんが来る…どうしよう…早く、部屋に帰って着替えなくては…この泣き顔はどうしよう……。