着ぐるみの恋
月子は慌てて、部屋で着替え、氷で目を冷やした。
が、アイラインもマスカラも剥がれ、赤く腫れた目は、そんな早急には戻らない。
仕方ない、このまま行くしか……。
下まで降りると…いた、恋い焦がれた男がそこに……。
修二が白いベンツに凭れ立っていた。
大きな、大きなフルーツバスケットを持って……。
「修二さん……」
お互い、顔を合わせるのは久し振りだった。
言葉が前に出ない二人。
「大丈夫?じゃないよな、顔色良くないし…目も赤い…」
「只の風邪だから…」
目が腫れていて良かった、泣いたせいか、鼻も詰まっていた、仮病には見えない。
修二はバスケットを差し出し
「これ…持てるかな?ちょっと大き過ぎ?」
「ありがとう…」
腫れた目から、また涙が溢れた。
「中にさ、風邪薬も入ってっから」
修二さん…そんなに優しくしないでよ、私、苦しいよ……。
「修二さん…本当にありがとう…」
「大事にな…月子の元気な顔みないとさ、俺…俺は……」
修二は言葉に詰まった。
言いたい事言えずに、口から出たセリフは、
「じゃ、またな」
恋に落ちたヤクザは、ベンツで走り去った。