着ぐるみの恋
修二のカトレア通いが復活した。
7番ボックスは、暗黙の指定席。
お客、修二、一人で、グラフ上、月子はナンバー1ホステス。
美咲の前歯事件のお陰か、修二を狙うホステスはもう誰もいない。
一週間に6日、修二と月子は会っていた。
カトレアの休業日は、二人は会わない。
店抜きのデートはまだ一度もなかった。
二人は…カトレア劇場の俳優と女優。
長く続く公演中、修二が、降板を望んだ。
「月子、次の日曜さ、空いてる?」
「えっ?」
「付き合ってくんないかな?」
「……」
「嫌なら、無理は言わないよ」
来た……これって、口説き?
どうしよう…仕事以外のデート?
黙った月子に…その場は一瞬にして灰色の雲行きとなった。
何か答えなくては… 月子は思う。
「大丈夫よ、嫌なんて思ってないわ、嬉しい」
「えぇ~ほんとに?そう思ってんの?」
「ほんとよ!」
不安を笑顔で隠す、女優月子。
一歩前進に、喜び隠せない修二…降板して、あぁ良かった…。