着ぐるみの恋
数時間も車走らせた後、海に着いた。
潮の香りが二人を包む。
浜辺まで降りていき、砂浜を歩く。
修二の革靴は、砂で艶を無くした。
月子の靴も砂まみれ。
皆、水着姿の中、素足で砂を踏めなくなった月子。
二人は砂上に腰を降ろした。
遠くの沖では、サーファー達が波と戯れていた。
拓也…今頃、どうしてるんだろう?
カワイイ彼女と波に乗ってるの?
もう結婚したの?
私の事、思い出す時ってある?
この病気になっていなかったら、私は今、あなたとここにいたの?
こっち側じゃなく、あっち側、あなたと海の上にいたの?
「月子、月子どうした?何考えてた?」
月子は首を横に振った。
「ううん、何でもないの、ごめんなさい」
そうだ…今は修二さんが横にいるんだ、と言っても、これは恋愛と呼べるの?
好きなのに…こんなに好きなのに……。
修二さんも私を思ってくれてる……。
なのに、何もないまま、別れがすぐそこで、手を受け待っているんだ。
嫌でも、無理でも…その別れに抱かれなければならない……この運命……。
身体が魂が熱い…この着ぐるみ…誰か切り裂いて下さい。