着ぐるみの恋


修二は考えた。

月子は…何か、思いに耽る時がよくある。

何、考えてんだ?

誰か惚れた男でもいんのか?

俺はただの客か?

遠くを見る寂しい目の訳は?

やっぱ…まだ無理な気がしてきた…まだ本当の事は…お前には言えない。

月子は…俺に惚れてはいない。


海の家で弁当を広げた。

太陽と潮と汗とサンオイル…真夏の空気に…純白スーツの二人は浮いていた。

まるで海上結婚式…幸せ満ちた新郎新婦に、水着着た周囲は、二人を祝福する魚達に見えた。

修二が、おにぎり頬張りながら言った。

「小さい頃の…お袋のおにぎりの味、思い出すよ」

「お母さん大変だったでしょ?行事の時なんか?」

   はぁ?

「だって5人兄弟っていったら、運動会とか、おにぎりの数って凄いんだろうなぁって」

「あぁ」

おっと、そうだったよ、俺は5人兄弟の長男だった。

緊張が緩んだ時、忘れる事があった。



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