着ぐるみの恋
修二は思う。
何でだ? こんな気まずい空気になるんだ?
愛しい月子の顔が…そこにあったから、少し触れただけだろ?
こんな事さえ許してくんないのか?
沈黙の壁を修二は破った。
「行こうか?」
「……」
行くって何処に?何処に行くの?
「帰ろうか?」
「うん……」
二人を乗せたベンツは海を後にした。
月子の胸中は、穏やかではなかった。
このまま何処に行くんだろう?
ホテル?
ホテルの駐車場に入ってくつもり?
その時、私はどう対処すれば、いいの?
あなたを振り切って逃げる?
その時…ここまで来て何なんだ!と、あなたは逆上するの?
ハンドル握った修二が、月子の顔色を読む。
月子の様子がおかしい。
俺を怯えている。
俺はやはり…月子にとって…お客以外何者でもなかった。
車の方向は、家路に向かっていた。
月子は思う。
これって家路の方向…このまま部屋まで?
平行線のまま、私は送られるの?
そうよね、ムードも色気もない女なんて、もう、うんざりよね……。