trick Or trёat!
確かに、正直…
俺は紅葉がウザかった。
面倒だし、うるせーし、終いにはぶっ叩いてくるし。
けど、その反面いいヤツだと思ってたのも確かだ。
きっかけは、そう。
―――あの2週間だった。
「…魔法、」
「は?魔法?」
「アイツ、魔法使ったんだよ。」
……そうだ。
紅葉の居ない世界は、俺の中で確実に存在していた。
だって、あの2週間の記憶だってあるし。
それに俺はあの世界でちゃんと生きていたはず。
きっと、あれは―――。
「颯、それマジ意味わかんない。」
「わからなくていい。」
「魔法って何だよ、魔法って!」
「そのまんまだ。」
はぁ?と首を傾げる樹。
と、その時。
バタバタと廊下に響く足音。
そして看護婦さんの怒鳴り声。
「こらー!病院は走らないで下さーい!」
「すみませーんっ!」
…バカか、アイツは。