trick Or trёat!


「もういいっ!」


ようやく諦めたのか
二つに結わえた髪を振り、紅葉は自分の席へ戻る。

もちろん、三角のハットを被った状態で。


…態度と見た目がマッチしてねぇっつーの。




「何だ、アイツ。」


はぁ、と盛大に溜め息を落とし俺は再びマンガを開く。


どこまで読んだかわかんなくなったじゃねーか、あのクソ女っ!



パラパラと読みかけのページを探していると

「颯、」と呼ばれ
俺の意識は三度、マンガの世界から引き離された。


樹は呆れたような
もうわかりきってるような顔で言う。


「さっきの多分、パーティの誘いだと思うけど。」

「は?パーティ?」

「ほら、ハロウィンの。」


それを聞いて納得。


だからあのハット…。

視線だけで紅葉を一瞥すると、すでに俺との言い合いは忘れたのか、ケラケラと女子たちと笑っている。



「女って、何でそうゆうの好きなのかね。」

メンドクサイ生き物だよな、と付け加えて言う俺に、樹はふっと笑って言った。



「由井は特別でしょ。」





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