ゆうやけノート
その日の放課後、わたしたちは2-2の教室を出て、
3人肩を並べて音楽室へ向かう。
2-2の、吹奏楽部3人組だ。
本当は根岸涼子を入れた4人組なのだが、
涼子は不登校で夏休みが終わってもめっきり顔を出さない。
家が近いこともあって、毎日学校帰りに連絡を渡しに行くものの・・・
最近は連絡すらも受け取ってくれない。
でも、次の朝学校に行こう!と呼び掛けに行く時には、
郵便受けから昨日入れた連絡用紙は綺麗に消えているのだった。
そして毎朝教室については同じ3人組の1人、
須加美帆に「今日もダメみたい・・・」と
涼子が今日も出てくれなかったことを告げる。
そんな毎日の繰り返しで、いつの間にか吹部4人組から"根岸涼子"の名前は消えていた。
そして3人組のあと1人は・・・永井優香だ。
3人で歩くときに、ちらっと左を向く。
美帆が「どうしたの?」と声をかける。
ううん、と右を向きなおして優香を見た。
ピンクの髪ゴムで、幼げな2つぐくりをしている。
150cm足らずの身長が、さらに優香を幼くみせる。
なのに頭の中はどうなってるんだよ・・・と言いたくなるような今日の点数を、
わたしはまた散々に聞かされた。
96、96、96、くろ、クロ、黒・・・
頭がうんざりするくらい、その数字をなんども聞いた。
しばらく休みたい気分だったが、その気持ちを押しとどめて
音楽室に入った。途端に女子特有の甲高い叫び声や笑い声が、疲れたわたしを迎える。
(まいったなぁ、もう・・・。)
苦笑しながら、みんなの輪を避けるコースを選んで歩き、
乱雑に並んだイスと机を引っ張り出して、つっぷして寝た。
あーもう、うるさいうるさいうるさい・・・!
普段は自分だってあの輪の中に入って、喉を痛めるような
馬鹿みたいな大声出して笑ってるけど・・・今日はなんかノリ気じゃない。
つーかうるさいっての。
なんでこんなにイライラしてるのか自分でもわからないうちに、
美帆がそばにやってきて、何も言わずに座った。
最初はこのまんまでいいや、と思ってつっぷしたが、
あまりにも何も言わないのでゆっくり顔をあげる。
すると美帆はそれを待っていたとでも言うように、
静かに口をあけた。
「永井、うざい」