ラーラ
 我家に来てからの裕次郎さんは家のまわりを不安げな感じで、うろつくだけでしたが、三日程してから一学年上の悦子さんが訪れてから一変しました。嫌がる裕次郎さんを近くの川へ釣りに誘いますと、初めはしぶしぶ釣っていましたが、一匹釣れると、それこそ夢中になり、悦子さんが「遅くなるから帰ろう」と言うまでいました。

 その日から釣りが大好きになった裕次郎さんは御主人から愛用の釣り竿を与えられると、夏休みの間、殆ど毎日というほど釣りに行くようになりました。そのうち、自分でギジエとかいう物も器用に作るようになりました。もちろん私は何処へ行く時も一緒です。裕次郎さんは日ごとの日焼けで、夏休みの終わる頃には見違えるほど逞しくなっていました。

 楽しい夏休みもあっという間に終わり、いよいよ学校に行く日になると、裕次郎さんは初めて見た時の気弱そうな男の子に戻っていましたが、それでも頑張って悦子さんに伴い自転車で行きました。私も心配なのでこの日は一緒に行く事にしました。

 その日は学校が早く終わるので門の前で待っていると、やがて帰る時間になりました。いつものようにさっそうとした悦子さんが出て来ると、その後を裕次郎さんがはにかむようにうなだれて付いて来ました。私は一瞬おかしかったけど嬉しくなり、二人の間を前に後ろに楽しく帰りました。
 
 やがて悦子さんは中学校を卒業して、大きな町の高校へ入りました。我家のまわりにも十数軒の家が建ち、バス停も出来て悦子さんはバスで高校に通いました。

 一年後に裕次郎さんも中学を卒業しました。いつも手伝っていた家具作りを目指していたので大きな町の専門高校に入りました。帰宅すると少しの時間でも家具作りを手伝いました。同じ血が流れているのか飲み込みが早いようで、御主人は近所の人に自慢しては喜んでいました。

 悦子さんとは会う機会が少なくなりましたが、会った時はそれこそ時を忘れて話し込んでいました。

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