ラーラ
 本格的な家具作りに就いて、5年程過ぎた頃、親友から「結婚するので、いつまでも心に残る飾り棚を作って」と頼まれました。裕次郎さんは親友の為に思いを込めて作りました。

 やがて出来た飾り棚を見に来た親友は素晴らしい出来栄えと一風変わった作りに感激して、それはたいそうに喜ばれました。
 
 たちまち友達から友達へと伝わり、それなりの注文が来て、裕次郎さんはこれからはおじいちゃんを楽にして上げられると思い意気揚揚となりました。
 
 ところがあんなに元気だった御主人が少し体調が悪いと言うので都会の病院で検査を受ける事になりました。
 
 翌日、裕次郎さんは病院へ出向き、御主人の元気な姿を見て、安心して病院を出て私の待っている車に乗ろうとすると後を追ってきた病院の先生から「心して聞きなさい」と言われ、「おじいちゃんはガンで他にも転移していて、あと僅かな命しかない」と言われました。

 その日はとりあえず家に帰り、悦子さんのお父さんにも相談しました。裕次郎さんは朝が来るまで一睡もせず苦しくて身悶えるような夜を過ごしました。
 
 翌日、裕次郎さんは悦子さんのお父さんと一緒に病院へ行き本当の事を御主人に言いました。初めは戸惑いながらも御主人は「有り難う、よく言ってくれたね」と言い、そして「お前には苦労ばかり掛けてすまなかったね、許してくれよ」と涙を流しながら言われたそうです。

 おじいちゃんは悦子さんのお父さんにベッドの上で土下座をして「裕次郎のことをこれからもよろしくお願いします」と頼まれました。悦子さんのお父さんも涙をこらえて「心配しないでください」と言うのがやっとだったそうです。
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