その男☆ナルシストにつき!!
奇想天外
あれから10日。


七瀬から連絡なし。


映画の撮影に入ったみたいだし。


これで終わってくれると思ってた。


♪♪♭~♪


まさか…


メールを開くと、やっぱり七瀬だ。


彼女をうまく誤魔化せて、ほとぼり冷めたから連絡してきたんでしょ。


もう、あたしの決意は固いんだから。


このままズルズルしても仕方ない。


当然、シカトでしょ?!


彼女の泣いてる姿見ちゃったら、連絡する気なんて起きてこないし。


だけど、メールだけは読んでしまう自分が悲しい…。


頭の中に、恋の奴隷って曲が流れてる。


別に、七瀬に恋してるわけじゃないけど。


奴隷つながり?!


『忙しいみたいだな。ちゃんと寝てるか?撮影始まった。初日に緒羽先生が来てた。伊吹のおかげで、理想通りの尚吾だって大喜びだった。ありがとう。伊吹も頑張れよ!!』


なんで、こんな時に…。


心配してくれて、お礼まで言ってくるの?


いつもみたいに『連絡しろ!!』とか『すぐに来い!!』とか、ムカツクメールしてくればいいじゃん。


ギュッと携帯を握りしめた。


心が張り裂けそうなくらい痛い。


痛すぎて、涙が浮かんで。


溢れそうになるのを堪えるのが必死。


うつむいたまま、顔なんか上げられない。


「先輩…どうしたんですか?」


佐井が心配そうに顔を覗き込む。

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