その男☆ナルシストにつき!!
「ごめん。でも、伊吹の本心分かって嬉しいよ。」


「本心?」


「うん。あの約束で、伊吹は自分の気持ちを閉じ込めちゃってるから。」


「それはない。自分で選んだことだから。」


「ねぇ、何か勘違いしてない?」


「勘違い?」


「そう。その約束がなければ、マキの結婚生活もダメになると思ってるでしょ?」


「そうじゃん。」


結婚の条件だったし。


「その程度の気持ちで結婚なんかしてないし。元から結婚なんてできないと思ってたんだから。だから、マキ達はどうなっても大丈夫。別れさせられても、形なんかにこだわらないから。」


笑った顔が胸に突き刺さる。


「何言ってるの?子供だってかわいそうでしょ?」


もう、2人だけじゃないし。


「その正義感が重たいの。伊吹の幸せを考えたら、マキ達だけ幸せでいいはずないでしょ?伊吹のことを考えると毎日苦しいの。」


泣きそうになってる。


「じゃあ、どうしたらいいの?あたしが、あの時、約束しなければ良かった?」


「そうじゃなくて、誰と一緒にいたら一番幸せか考えて。誰が好きなの?それは、マキでもなければ黒崎でも仕事でもないでしょ?」


「あたしは…。」


言葉に詰まるでしょ。


そんな真剣な顔して涙流されたら。


「マキはあの人が大好きだから、伊吹の辛さ分かるんだよ。好きになっちゃいけないって気持ち押し殺して。分かるから素直になって幸せになって欲しい…。」


呪縛が解けたような気がした。


あたしまでいつの間にか涙が出てて。

< 166 / 310 >

この作品をシェア

pagetop