その男☆ナルシストにつき!!
最初は驚いてた。


でも、段々と表情が怒り出して。


「じゃあ、伊吹の幸せは?」


「マキが結婚するのと引き換えになくなった。」


「なんだよそれ?!」


「だから、どんなに七瀬があがいても、あたしと黒崎は離婚できません。」


「そんなのって…。伊吹はそれでいいのかよ?」


「いいよ。自分で決めたことだし。もともと、地味で冴えないあたしが、七瀬なんかと過ごせたのは夢みたいなものだから。」


「だったら、なんで泣いてるんだよ?」


グッとうつむいてた、あたしの顔を両手で持ち上げた。


「楽しすぎたから。あたしには夢みたいな世界で。…七瀬がずっと好きだった。」


ポロポロと涙は落ちてくる。


それでもにっこりと笑って見せた。


「どうしてこんな話してるのに、好きだったなんて言うんだよ?」


「好きだから…。幸せが壊れるのが、どんなものか分かるから。だから、七瀬にもそれを分かって欲しかった。」


「オレには分かんない…分かりたくない!!!」


ギュッと抱きしめてくれるその腕の中は、苦しいくらい優しかった。


やっぱり…好きだ。


そんな感情が出ちゃうくらい嬉しくて。


でも、これ以上は無理なんだ。


「ごめん。さよなら。」


七瀬の腕をはらうと、テーブルの上に鍵だけ置いて足早に帰った。


もし…


もしも3年前に出会ってたら、こんな思いはしなかったのかな?


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