その男☆ナルシストにつき!!
別に、七瀬だからってわけじゃない。


きっと、城金兄でも同じだと思う。


「じゃあ、帰らせない。」


ギュッと後ろから抱きしめた。


ビックリした。


だけど、イヤだって言えばウソになる。


ここまで七瀬を忘れようとしたのに。


やっと、出口を見つけたのに。


妊娠騒動が嘘だって分かって…。


あたしが七瀬を嫌う理由がなくなっちゃって。


小さな小さな欠片が、光を放ち始めちゃってる。


ゆっくり目をつぶると、ふ~っと深呼吸した。


「七瀬。あの夜のお願い聞いてくれてありがとう。」


「あの夜?」


「うん。仮眠室でのお願い。」


「…ああ、好きだったら、これ以上壊さないでってヤツか。」


「うん。嬉しかった。それで、七瀬も頑張ってくれてて。あたしも頑張ったんだよ?…でも、辛くて仕方なかった。そしたらね、ずっと黒崎がそばにいてくれて。そのおかげで、あたし達は本当の夫婦になれたの。」


「本当の夫婦?」


「うん。今回怒っちゃったのは、自分と重ねちゃったから。」


「何を?」


「あたしね、黒崎の子供妊娠したんだ。黒崎、凄く喜んでた。」


「嘘だろ?!」


フッと、七瀬の腕が離れた。

< 235 / 310 >

この作品をシェア

pagetop