その男☆ナルシストにつき!!
「ちょっといい?」


「はい。」


ここでまだ怒れない。


もしかしたら、何か知ってるかもしれないから。


廊下に出ると、一回深呼吸して腕を組みながら振り向いた。


「ねぇ、七瀬が失踪状態なの。何か知らない?」


「失踪ですか?!」


一瞬にして、顔が青ざめた。


この驚き方。


知らないみたいね。


「そう。10日も連絡つかないの。宮元なら知ってるかと思って。」


「知らないです。」


本当に知らないみたいね。


心配そうな顔しちゃって。


誰のせいだか…。


「ねえ、七瀬に妊娠したなんて、どうして嘘をついたの?」


「なんでその話を?」


青ざめた顔のまま、固まって。


相当驚いてる。


「…ちょっと噂でね。で?どうして嘘をついたの?」


キッと睨(にら)んだ。


「…七瀬に、これ以上かかわって欲しくないから。」


数秒の間。


唇をかみ締めて。


視線は下を向いて。


まるで、何かの覚悟を決めたみたいに。


ポツリとつぶやいた。

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