その男☆ナルシストにつき!!
「オレは誰となにしてようが気にしないけど、いちようは夫婦なんだよ。浮気してごめんなさいはオレにはないわけ?」


やっぱり…。


そう思ってるよね。


核心を突かれて、体も心も固まって動けない。


「ご…ごめ……なさい。」


声が震えて言葉になってない。


「よく考えろよ。自分の行動ひとつで、誰に迷惑かけるか?どれだけの人が苦しむのかをな。」


あの約束とマキの事を言ってるんでしょ?


「分かりました。」


それだけ言うと、さっさと会議室を出て行った。


我慢してた涙が、一気にこぼれそうだったから。


エントランスまで走ると、堪(こら)えてた涙をボロボロとこぼし始めた。


誰にも泣いてるのなんか見られたくなくて、壁際の観葉植物に隠れて。


黒崎に言われて胸が痛むだけじゃない。


自分の立場を忘れて浮かれてたのが情けなくて。


マキの事をすっかり忘れてた。


バカみたいに有頂天になってた。


あたしのせいで、城金兄も黒崎からどれだけ怒られただろう?


その胸の痛みを考えると、苦しくて仕方ない。


甘い夢だったと思って、いつもの地味な生活に戻ろう…。


元は関わりなんてなかったんだし。


顔を上げると、ゴシゴシと涙を拭いた。


「さて、仕事だ。」


自分に気合を入れて、気持ちを切り替えた。


「そりゃ~、仕事も増えたしね。」


背後のイヤミなオーラに振り返った。

< 37 / 310 >

この作品をシェア

pagetop