その男☆ナルシストにつき!!
「今回だけだからな。」


そう言いながら、胡弓を持って出てきた。


あたしの目の前に座ると、フ~っと深呼吸をすると、胡弓を弾き始めた。


周りの空気まで凛としちゃって。


胡弓がこんなにいい音を出すとは思わなくて。


あっという間に、世界に引きずり込まれた。


胡弓を弾いてる七瀬もまるで別人。


一本の筋が通ったようにシャンとしてて。


凛々しいって言葉がピッタリなくらい。


こんな顔もするんだ…。


段々と胸の中が熱くなってきた。


トクン…

トクン…


今まで感じた事のない温かい鼓動が鳴っている。


トクン…

トクン…

トクン…


なんだか分からないけど、胡弓の奏でる音に引き出されるかのように、段々と鼓動が増していく。


♪♪#♪♪#♪~


携帯の鳴る音で、一気に現実に戻された。


黒崎からだ。


珍しいな。


電話してくるなんて…。


携帯を手に取ると、足早に玄関に向かった。

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