その男☆ナルシストにつき!!
「なんだよそれ?」


パッと腕を放すと、フイッと横を向いてしまった。


「いいじゃん。大事な思い出なんだから。」


笑って誤魔化して、この場を切り抜けるしかない。


「ふ~ん。大事な思い出ね…。」


「そういう事なので、またね。」


くるりと振り向いた。


「誰が帰っていいって言った?」


「はい?」


振り返ると、いつもの七瀬がデンと態度もでかくソファに座ってる。


「どうしても帰りたかったら、キスしたらいいよ。」


ニヤッと笑った。


「じょっ!!冗談じゃないわよ!!そんなのできるわけないでしょ?!」


帰るだけなのに、どうして七瀬とキスしなきゃいけないの?


冗談じゃない!!


やっぱり最低男だ。


「どうした?早くしないと帰れないよ?」


したくなんかない。


できるはずなんかない。


ムシして帰ることもできる。


その後どうなる?


あの写真バラ撒かれて終わり。


せっかく、映画が成功すれば写真を消すって約束してくれたのに。


理性と感情が渦巻いて対立してる。


グッと手を握り締めたまま、その場から動けない。

< 86 / 310 >

この作品をシェア

pagetop