聖男子マリア様!? 聖なる騎士と天の歌姫
「私はすべての人を許します」
ピアノの音がピタリと止む。
ゆっくりと琴音さんが顔を上げる。
「その者は若い身の上でありながら、か弱き者を守る盾となり、二人の魂を救いました」
ふらりと立ち上がる琴音さんはまるで操り人形のように、オレに向かって何かを飛ばす。
闇の中、鈍く銀色に光る物がオレを目がけて飛んでくる。
けど、オレは動ずることなく続けた。
だって。
「やらせない!!」
オレの前にそう言って立ちはだかり、身を呈して守ってくれる天使様がいらっしゃるから。
オレは安心して、自分の仕事ができるんだ。
天使様は飛んできた物をすべて掴みとる。
手の中にあるのは銀色の鋭くとがった爪のような刃物だった。
「天におられる我らの父よ」
祈りの言葉。
オレの声が届くように。
オレは丁寧にその一つ一つを唱えていく。
「御名が聖とされますように。
御国が来ますように。
御心が天に行われるとおり、地にも行われますように。
私たちの日ごとの糧を今日も お与えください。
私たちの罪をおゆるしください。
私たちも人をゆるします。
私たちを誘惑におちいらせず、
悪からお救いください。
国と力と栄光は、永遠にあなたのものです」