聖男子マリア様!? 聖なる騎士と天の歌姫
ゆっくり足元に目をやると。
馬の影からなにやら手が伸びていて、オレの足をがっつり掴んでおいでです。
逃げようとしても、それよりも強い力で引っ張られて、絶対に離さないってかんじでぐぃぐぃ引っ張られる。
馬から漏れだす瘴気が影になり。
それがまた手の形になり。
オレをガッチリつかむという荒技を繰り出している。
つーか、ヤバいよね?
まぢでヤバいよね、この状況。
こういう時に限って天使様は手がいっぱいで、オレのことなんざ見てもいない。
そうだった。
『なんとかしろ』
と言われたんだっけ。
ああ、ごめんなさい。
オレ、やっぱり足手纏いです。
「テンシン君!? だめぇぇぇぇっっっ!!」
ワコちゃんの声が聞こえた気がした。
そのあとに、なにかすごい歌声が聞こえた。
ララーって。
高音のすごい歌声。
天使様のリミット解除の時にいつも聞こえる天使の合唱みたいなあの声よりもはるかに高い声で、それは聞こえた。
見上げたオレはびっくりした。
馬が足を上げたまま止まってる。
しかも、ちょっとブルブル小刻みに震えてる。
何があった?
「真理矢!! こっちや!!」
隼人の声にオレは固まって動かない掴まれた手をひきはがし、隼人の元へと駆け寄った。