学園バンビ


率直に伝えると、蒼乃は納得したような顔をしたが、次の瞬間には首を傾げ、



「……下の名前ってなんだっけ?」



と真顔で聞いてくる。

俺はそれに苦笑いで返し、もう一度自分の名前を告げた。



「穂波陸嵩です、よろしく」

「ご、ごめん。よろしくね、陸嵩」



へらっと笑った蒼乃にケラケラと笑い返すと彼女も笑ってくれた。

それだけで嬉しかった。

一人前に人を好きになる感情はあるし、中学の頃も同じ部活の先輩に恋をしたり(不発に終わったけど)、同級生に告白されて流れでつきあったりとかはあったけど、ここまで自分から誰かを守りたいって気持ちになったのは初めてだった。




それから合宿から終わった神崎光がやってきて、俺たちの時間は終わりを告げた。


彼女が挨拶をして笑いかけられた時、俺は上手く笑顔を作れていただろうか?


実は元水泳部から神崎光が中心となって園田蒼乃に何かしてる、と言う話を聞いたことがあったのだ。

神崎が荷物を置いてくる、と言って部屋を出たあとこらえきれずにため息を吐きだすと、蒼乃は不思議そうにこっちをみた。





< 10 / 22 >

この作品をシェア

pagetop