学園バンビ


暫く歩き、やはり何をあげていいのか分からなくて、俺は休憩所の椅子にぐったりと座り込んだ。

タオル、ティーカップ、ネックレス、帽子、手袋、髪飾り。

すごい種類のものが売っていてなにに手をつけていいのか全く分からない。

家族も男兄弟だけだから、そもそも女の子の物というのを知らないし。


俺は大きく溜息をついた。

ラビ先輩や梅は何を買ったんだろう。

またしても同じループに飲み込まれそうになっていると、前方から俺を呼ぶ声がして顔をあげる。



「バンビ君? あ、やっぱりバンビ君だ!」



視線の先には同じ陸上部の女子3人が、手を振ってこっちに向かってきていた。

俺も慌てて席から立って笑顔を作る。



「うっす、買い物?」

「うん、今日は午前中部活だし明日は日曜で部活休みだし、皆でゆっくりしようって」



そう、今日は蒼乃の誕生日会の前日。

だからこそ焦ってたりもするわけだ。



「バンビ君は?」

「俺も買い物、梅と一緒に」

「梅ちゃんも? へえ、何買いに来たの?」



なに、か。

好きな子の誕生日プレゼント、って言ったら笑われちゃうかな。

俺はその言葉をぐっとかみ締めて、言葉を紡ぐ。



「友達の誕生日プレゼントを選びにちょっとね」



それがなんか見つからなくて参ってて、とはにかむようにして言うと彼女たちは楽しそうに笑った(どうして笑われたのか分からない)。

その後に、口々に色々といわれて、終いには一緒に買いにいこう、と提案されてしまった。

彼女たちの厚意に縋りたい気持ちも十分にあったけど、俺は首を振った。



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