学園バンビ
「悪い、やっぱり自分で選んだものをあげたいから。でも気持ちは嬉しい、ありがとう」
そう言って笑みを見せると、彼女たちは少し驚いたように目を丸くして俯いた(心なしか顔が赤い)。
怒らせてしまったのかと、ちょっと冷や冷やもしたが、そうでもないらしい。
すぐに顔をあげて、許してくれた。
それから他愛のない話をいくつかして、買い物の続きをすると言ってはりきって去っていく。
その背中を見送っていると、一人の女子部員がクルリ、と此方に顔を向けると口を開いた。
「そんなに拘らないで、自分があげたい、使って欲しいって物をあげたほうがいいよ! それが自分にとってもきっと友達にとっても一番嬉しいと思うから」
距離があって、少し大きな声だったけど、その言葉がジン、と胸に響いた。
……ラビ先輩や梅に負けたくないって気持ちばっかだった気がする。
蒼乃にとって特別じゃなきゃいけないなんて、そんな風に思ってた。
そりゃ、蒼乃の事を考えながら選んでたけど、どこか邪な気持ちがあったんだろう。
「うん、ありがとう!」
俺もちょっと大きな声で言い返すと、彼女はにこりと笑って去っていた。
そうか、俺のあげたいもの。
蒼乃が喜んでくれて、そして俺もあげて嬉しいもの。
使ってもらえれば嬉しいもの。
ああ、こんなにも簡単に答えがでるじゃないか。
俺は自分自身の自己中心的な考えを嘲笑い、再び雑貨屋の中へと入って行った。
お目当てのものを手にして、会計の時、彼女さんへプレゼントですか、と店員さんに言われ“はい”、と言ったのは内緒にしておこう。