学園バンビ
そして迎えた誕生日当日。
決行会場はラビ先輩の家。
散らかっている部屋を片付け、少ないけど飾り付けをした。
梅が蒼乃の呼びに言ってる間、俺たちはどきどきしながら玄関前で蒼乃を待った。
――――ガチャリ。
ドアが開かれて蒼乃が入ってくる直前、俺とラビ先輩はクラッカーの紐を引いた。
パ、パン!!
可愛らしい音を立ててクラッカーが破裂する。
「ハッピーバースディ!」
目を真ん丸くして驚いている蒼乃に満面の笑みでそう告げる。
またしても不思議そうな顔をする蒼乃に、予想通りだと思い、また噴出して笑ってしまった。
* * * *
「誕生日会?」
蒼乃の声に、ラビ先輩が頷く。
「そ、お前の誕生日8月29日だったろ? それ言ったらバンビが大慌てしてさ!」
「ラ、ラビ先輩!!」
説明はいいけど、俺のそう言うこと言わないで欲しい。
恥ずかしいじゃんか。
そんな俺をよそにラビ先輩が続ける。
「まあ、と言う訳で一ヶ月遅れのお前の誕生日パーティを開こうって話になったわけ」
「ああそっか。あたし、誕生日過ぎてたんだ」
その言葉にまたしても噴出してしまう。
やっぱり忘れてたんだ。
「蒼乃の事だから忘れてると思った! でも、いいでしょ? 過ぎてから祝っても」
そういいながらプラスチックのコップにジュースを汲む。
蒼乃は周りの飾りやら、料理やら(ラビ先輩と買ってきたご飯だけど)を眺め、嬉しそうに頬を赤らめた。
ああ、見たかったんだ、この顔。
声に出さず、表立って顔に出さず、蒼乃は俺たちの厚意を受け取ってくれる。
その時のぐっと心に押し込めたように見せるこの表情がとても好きだった。