学園バンビ


蒼乃は俺を笑う顔をじっと見つめると、下唇を小さく噛んでそして笑う。



「――――ありがとう、陸嵩」



その“ありがとう”の言葉にたくさんの感情が入ってること知ってる。

ちょっと涙腺が緩みかけて瞳が潤んでるのも知ってる。

これからも祝っていけるとは思うけど、でも、今日でも凄くいい思い出になるように。




料理を一通り食べ終わり、ケーキを出し始めた頃。

俺とラビ先輩は目配せをして互いに頷いた。

そう、プレゼント。

俺は梅とトランプゲームをしている蒼乃を呼ぶ。



「蒼乃」

「ん?」

「蒼乃にプレゼントがあるんだ」



その言葉に驚く蒼乃。

どこに驚く要素があったのだろう、と首を傾げると目を丸くしたままの蒼乃が言う。



「もうこの誕生日会がプレゼントだと思ってたから……、ごめん、びっくりした」



誕生日って言えばプレゼントだろう、と思ったけど今までの経験がそう思わせたんだろうと思って、言葉を飲み込む。



「もちろん、プレゼントあるよ」

「そ、園田さん、こ、……これ」



俺がプレゼントを差し出す前に、トランプゲームをしていたはずの梅が蒼乃に向かってプレゼントを差し出した。

嘘……、俺が一番初めに渡すはずが、先、越されてる!

俺は呆然としながらもその光景を眺めていた。

蒼乃は梅にお礼を言うと、包み紙を優しく破く。




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