学園バンビ
「園田さんは悪くない! バンビ君とか他の人は知らないだろうけど、園田さんは水泳部員一人ひとりに謝って復帰してもらおうとしてたんだよ! 何度も何度も頭下げて謝って! コーチや顧問の先生にだって説得して! 園田さんは悪くないよ!」
「え」
梅は嘘なんてつく奴じゃないし、滅多に怒ることはない。
そんな人間がこうして言うんだ、それが真実だと確定するのに時間は掛からなかった。
涙目になって俺を見る梅を、俺も泣きそうになりながら見返す。
なんて事をしてしまったんだと、と言う罪悪感。
元水泳部の友達が泣きながら言う“園田蒼乃は最低だ”の言葉を丸呑みし、勝手に頭に血を登らせて……、結果これだ。
後にラビ先輩にこれを話したら、大バカ者だと罵られた。
確かに今から思っても馬鹿な行動だったと思う。
それからすぐに謝りに行こうと思ったが、時間の規定の所為で会えず。
次の日も次の日も、結局用事やらが重なり会いにいけなかった。
ついに三度目の正直、3日目。
俺は園田とプレートが書かれたドアの前で深呼吸した。
女子寮は食堂を間に挟んで同じ階にあるから行きやすいが、通る度、知り合いや知らない人に声をかけられてここまでくるのに20分もかかった。
俺は意を決して扉をノックする。
返事がない。
「……あの、俺なんだけど」
思った以上に焦った所為か、自分の名前を言い忘れたことに気づき、あたふたしていると、扉の中から“はい”と返事が聞こえた。