学園バンビ
「……気にするよ。本当ごめん、……、本当」
気にするよ、だってこんなに虚勢を張って笑ってるのに。
きっとこれまでも誰かに頼らず生きてきたことがあるのだろう。
彼女はブイサインを作って見せた。
そして大丈夫だと、その震える口から告げたのだ。
ああ、どうして。
こんなにも弱いじゃないか。
何処が悪女なの? どこが最悪なの?
こうやって必死に自分を強くさせようとただ頑張ってる女の子なのに。
泣き出していまいそうに、不安な顔をしているのに。
だけど、彼女は勝負の時もそうだったけど、悉く俺の予想を破った。
「本当に大丈夫だから。君が言ったことに間違いはなかったし、私もそれを理解してる。……うん、それにそんなことじゃ折れないくらい水泳を愛してるから」
少し低めのトーンが告げる。
その声に偽りがないと分かったのは、マーメイドの顔を見てからだった。
優しく慈しむように笑う彼女の顔はそれを物語っていた。
やっぱり凄い。
ときどき見せる、彼女の本当に強い部分。
それに触れると、違う意味でドキドキしてその原点を見たくなる。