学園バンビ


心の中で大きく深呼吸して、蒼乃の腕から手を離し、今度はゆっくりと掌を握ってみる。


湿った暖かい手。

好きな子の、手。



「まだ付き合うとか考えてくれなくて良いんだ。あ、ねえ! 俺ら今日から友達として付き合っていこうよ」



あ、我ながらちょっといいアイデア。

まだ恋愛感情とかいきなり言われても困るだけだもんね。

ゆっくりでいいから俺の事を意識してくれると嬉しい。

だから、その時までの言うなれば俺のお試し期間って感じ。


すると彼女は先ほどまでの表情とは一変して、柔らかい顔をした(この顔好き)。



「うん、よろしくバンビ」



握られた手に力を込めて返され、しかも笑顔を向けられ、俺は少し照れて下を向いた。

ああ、でも折角なら……。



「ん……。あのさ、バンビはやめようか。俺も蒼乃って呼ぶし、蒼乃も俺の事名前で呼んでよ」



好きな子には名前で呼んでもらいたい、って言うのは誰にでもある感情のはず!




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