小春日和
「…あ…母さん…帰ってたの?」
声が震えた。
声だけじゃない。
手も、足も…体全体が一気に震え出した。
そして、お母さんはゆっくりと口を開いた。
「何?帰ってきちゃ悪いの」
凍るような言葉。
「そんなこと…!!」
「あなたの男?……ふっ…やっぱり親子なのね。男連れ込むなんて…あの人と同じだわ!」
「……」
お母さんは夏目先輩に目を向けて私にそう言った。
あの人とはもちろん、私のお父さん。
浮気……してたみたい。
お母さんがいない日に知らない女の人が家にいたときがあった。
幼かった私はそれが浮気だったなんてしりもしない。
沈黙のあと、お母さんはすたすたと歩いて行ってしまった。
「いつ帰ってくるの?」とか「お家にいて」なんて昔は言ってたけど、言っても無駄だって分かったから、私とお母さんの会話はいつもこんな感じ。
本当はいつもは話しかけないんだけど、夏目先輩がいたから何か今日は違うかなって思った。
でも、結局違わなかった。
というかいつもより酷かった。
はは……
もう悲しいを通り越して笑いそうな勢いだよ。