刹那よりも限り無く
私はガバッと跳ね起きた

「タカシ!タカシが私に会いにきたの!」


レイ子は私に驚いて
目を丸くしていたけど


「あのね、悪いんだけど…」


あきれたように私から目を背けた



「ほんとにタカシだったの!私を抱き上げた腕もあのブルガリの香水の匂いも…」



私の目から
もう枯れてしまったと
思った涙が

あふれてくる



…わかってた

私は
おかしなことを
言っている


だってタカシは
死んだんだよ…


私は口をつぐんだ




「…わかった。看護士さんに運ばれた時のこと聞いてくるよ。」


そんな私を見かねたのかそう言って

レイ子は病室を出ていった


入れ替わるように
連絡をうけて血相を変えたお母さんと康子さんが飛び込んできて


もみくちゃになって



その後はレイ子と話はできなかった



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