刹那よりも限り無く


薄茶色の
少し長めの髪が揺れて


机にひとり
つっぷしていた
彼の頭があがる


トビ色の瞳が
目を覚ましたのを見て

私は少しおびえた


タカシが私を見たのは
きっと
これが
…はじめてだから



「…何故さわったの?」

風に揺れて
少しタバコの匂いがした

私はほんの少し
勇気を出して
おそるおそる答える


「その指が唯一私を
助けてくれそうだったから」


彼は少し
不思議そうな顔をした


わたしはなんだか不安な気持ちになって
たたみかけるように
前のめりに言った


「私はうまく呼吸できない
魚みたいにいつも口をぱくぱくさせて泳いでるの」


すると彼は言った



「人魚みたいな
きれいな髪をもっているのにね」


トビ色の瞳が笑っていた
その瞳の奥で
人魚が髪をなびかせて
泳いでいるのを見た




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