欲張りなすき・・・
前の彼女と今の彼女

前の彼女

「毅が電話してくるなんて珍しいな。どうしたんだ?」

「頼む、翔!瑠璃香に会ってくれ!」

「いきなり何言っているんだよ。」

「頼む」

「何かあったのか?」

「頼む」

「・・・」

「頼む」

そういう毅の声が震えているのが電話越しでも伝わってきた。

「わかったよ、今からなら4時前にはそっちに行けると思うけれど、大丈夫か?」

「ああ、4時に〇〇病院の入り口で待っている」

「〇〇病院?なにかあったのか?」

「・・・」

「まあいいや、後で詳しく教えてくれよ。」




そういうと、翔は電話をきった。

「毅君から?なにかあったの?」愛莉が心配そうに聞いた。

「よくわからないけど、瑠璃香…」そう言いかけると、翔はしまったとばかりに話をそらした。
「いやなんか病院にいるって言うんだ。誰か怪我でもしたんじゃないのかな。雄哉悪いけど先生に早退するって言っておいてくれるか?」

「わかった。大丈夫か?翔?」

「まあ、とにかく行ってみるさ。今日はこれで帰るわ。ごめんな、愛莉。」

「・・・う・うん」

そういうと翔は、荷物をまとめて教室を後にした。

(今、瑠璃香って言ったよね・・・あの瑠璃香ちゃんのこと?そうめったにいる名前じゃないし、なんで毅くんが???)

「おい、大丈夫か?杉浦さん。」雄哉が心配そうに愛莉の顔をみていた。

「電話の相手、知り合いなら、一緒に行かなくてもいいのか?」

「私、そんなに親しくないから。」

「今日は俺と帰ろうぜ、杉浦さん。」

「うん。ありがとう雄哉くん。」

愛莉は不安で心配で泣きたいのを必死で我慢していた。翔の口から出た『瑠璃香』とは、愛莉の前に付き合っていた女の子の名前だからだ。


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