欲張りなすき・・・
翔が病院に着くと、毅は入り口で待っていた。

「急に呼び出してゴメン。」

「いや、大丈夫か?顔色悪いぞ。」

「そんなことより、会ってくれないか・・・」
そういうと毅は翔を入院病棟のほうへ連れて行った。

「瑠璃香入院しているのか?」翔の問いかけに毅は答えなかった。

「驚くなよ。」毅はそういうと病室のドアを叩いた。

「毅君。連れてきてくれたの?ありがとう。まだ眠ったままなの・・・」中から憔悴しきった中年の女性が現れた。
「翔君?今日は来てくれてありがとう。お願い、瑠璃香にあってあげて」そういうと女性は涙を浮かべて部屋を出て行った。

部屋に入った翔は言葉を失った。そこには体にいっぱいの管をつけた女の子、瑠璃香が寝ていたのだ。

「おい、これって。」

「ああ、瑠璃香だ。」

「いったいどうしたんだ。」



「・・・瑠璃香、死のうとしたんだ。薬飲んで、今度は手首を深く切って・・・」

「・・・」翔は何も言えなかった。

「俺じゃ駄目なんだ。今更こんなこと言えないけど、翔、瑠璃香のそばにいてくれないか?」

「・・・」翔は何て答えていいのかわからなかった。
< 35 / 61 >

この作品をシェア

pagetop