欲張りなすき・・・
「雄哉くん♪何歌う?」愛莉は、はしゃぎながら本をめくっていた。

雄哉は適当に4~5曲入力して愛莉に話しかけた。

「杉浦さん。別に無理しなくていいよ。つらかったら泣けばいい。我慢しないで思っていること吐き出しなよ。そうすれば楽になるよ。」

「雄哉くん」

「俺・・・何時間でも付き合うからさ。」

愛莉の目から再び大粒の涙がこぼれ始めた。

「俺の前では、我慢しなくていいよ。見ていて痛々しいよ。」

愛莉は雄哉の胸に顔をうずめて声を出して泣き出した。それと同時に始まったカラオケのイントロが、愛莉の泣き声を隠してくれた。

そんな愛莉の頭をなでながら雄哉は「俺がそばにいるから・・・愛莉」とささやいた。その声はカラオケの音にかき消され、愛莉の耳には届かなかった。

雄哉が入れた曲が終わるまでの数十分、愛莉はひたすら泣き続けた。雄哉はただ、だまって見つめていた。
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