欲張りなすき・・・

別れ

愛莉は腫れた目を隠すように、メガネ姿で家を出た。

バスを降りて駅に向かう途中にある公園のベンチ。高校時代毎朝、翔と待ち合わせした場所だった。今は別々に学校に行っているのに、愛莉は必ずそこで立ち止まってしまう。

「よお!愛莉」そこに翔が立っていた。

「えっ?翔?」

「なに驚いているんだよ。」

「だって・・・」

「たまには愛莉と一緒に学校行こうと思ってさ。」

愛莉は嬉しくて、泣きそうになった。

「なに泣きそうになっているんだよ。」

「だって、だって・・・」

「行こうぜ」そういうと翔は愛莉の手を握った。

「ゴメンな。愛莉。昨日泣いていたんだって?だから今日はメガネなのか。」

愛莉はドキッとした。「誰から聞いたの?」

「美崎」美崎とは愛莉のクラスの友達だ。

「そうなの?」

「おお。すごい剣幕で電話かかってきたぜ。『あんた愛莉になにしたの!!!』って感じでさ、怖かったぜ。昨日の病院の件・・・そんなに心配してくれていたんだ。大丈夫だから。」


2人はしばらく無言で歩いた。


「今度、落ち着いたら一緒にお見舞い行くか?」

「いいの?」

「きっとあいつも喜ぶよ。」


(私の知っている人?誰?中学の同級生???それともあのコ?)

愛莉は不安な気持ちを隠そうと必死で明るく振舞った。

「ところで、誰が、」

愛莉が聞こうとしたそのとき、ホームに電車が入ってきた。

「何か言った?愛莉」

「ううん。いいの」

2人は電車に乗り込んだ。


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