欲張りなすき・・・
病室に戻った翔は、瑠璃香に「言ってきたよ。」と告げた。

「ごめんね。翔君」瑠璃香の目から涙がこぼれた。

「お前は気にするなよ。元気になることだけ考えていればいいから。」そういうと翔は瑠璃香を優しく抱きしめた。


毅に瑠璃香とよりを戻すように懇願されたあの日、翔はどうしていいのかわからなくなっていた。

何故、こんなことになったのか。嫌いで別れたわけではない。毅が瑠璃香を気に入ったから、翔は身を引いた。瑠璃香の気持ちも考えずに。
今でも瑠璃香に愛情はあるのか?いや、もうとっくに消えている。
ただ、あの状態になっても自分の名前を呼んでいる瑠璃香が不憫に思ったのは確かだ。
今突き放したら瑠璃香はどうなる?
いや、あの日毅と喧嘩してでも瑠璃香を守っていれば、こんなことにはならなかった。

同情?・・・
罪の意識?・・・

意識を取り戻した翌日、翔の顔を見て昔のように嬉しそうに笑う瑠璃香を見たとき、翔は愛莉との別れを決意した。

「瑠璃香・・・」

「なに?翔君?」

「お前、おれと一緒にいたいか?」

「うん、一緒にいたい。」

「でも、お前はおれの1番じゃない。それでもいいのか?」

「うん。」

「もう、昔のようには付き合えないけどいいのか?」

「それでもいい、翔君に会えるならそれでいいの。もう、会えないのは耐えられない」

瑠璃香は興奮して泣き出した。翔は瑠璃香をなだめるように抱き寄せた。

「わかった。お前といるよ。」

瑠璃香は涙をこらえながら、ありったけの笑顔で
「ありがとう」と翔に言った。
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