欲張りなすき・・・

幼馴染み

涙をこらえながら病院の坂道を歩いている愛莉の横に、1台の車が止まった。

「杉浦さん。乗って」中から声をかけたのは毅だ。

「毅くん。」

「送って行くから。ちゃんと送り届けるから安心して。」

愛莉は導かれるままに毅の車に乗った。


「翔が、杉浦さんが心配だから俺に送って行けって言うんだよ。人使い粗いよな。俺だって失恋して傷ついているのにさ。」

「翔が・・・いっそ突き放してくれた方が楽なのに。」そういうと愛莉の眼から涙がこぼれてきた。

毅はちらっと愛莉を見た。

「杉浦さんさあ、どうして俺が翔と仲いいのか不思議でしょ。」

愛莉は小さくうなずいた。

「実は俺達、幼稚園からの付き合いだぜ。俗に言う幼馴染ってやつさ。」

「えっ?知らなかった」

「だろ。こんなんだから、学校では声かけるな、他人のふりしていろってさあ、翔に言っていたんだよね。」

「そう。」

「だからさ、遊ぶ時も誰にも見られないように、わざわざ学区外に行っていたんだぜ。」

「なんで、そこまでしていたの?」

「うーん・・・俺がね、嫌だったからだよ。」

「・・・・・」

「杉浦さんだって、俺と翔がつるんでいたら、翔と付き合おうって思った?」

「・・・それは」

「思わないよな、普通。だからだよ。」

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