欲張りなすき・・・
「昨日、愛梨ちゃんと鎌倉へ行ってきた。」と雄哉が先に話し出した。

「そうか。」(杉浦さんじゃなくなったのか。)

「でさっ、愛莉ちゃんに言われたよ。『翔と喧嘩しないで』って」

「あいつらしいな。」

「でさ、殴ったって言ったら、『謝りなさいね』って言われた。」

雄哉は言葉を選びながら翔に「俺、昨日、愛梨ちゃんに好きだっていったんだ。」

「そっか。」

「驚かないのか?」

「なんとなくわかっていたから。」

「そうか。」

「お前になら、安心して任せられる。俺が出来なかった分、愛梨を、頼む」翔の目から涙がこぼれた。

雄哉は、気がつかないフリをした。


「愛梨ちゃん何も言わなかったけれど、なんで・・・その・・・瑠璃香って子のところに行くことにしたんだ?」

「・・・」

「いや、言いたくなかったら言わなくていい。」

「昨日は何を言っても言い訳になると思って言わなかったけど・・・いや、聞いてくれないか。」

「ああ。」

「雄哉に想像できるかなあ。電話で病院にいったあの日、目の前に痛々しいほどいろいろな器具をつけられて寝ている瑠璃香がいたんだ。おれの名前呼んでいるんだ。意識がないのに・・・」

「その瑠璃香って子、事故にでもあったのか?」

翔は首を振って、「自分で命終わらそうとしたんだ。」

雄哉は驚いて言葉を失った。

「なのに、おれの声を聞いて、戻ってきたんだ。こっちに。目を開けたとき、おれを見て泣いて謝るんだよ。」

「・・・」

「瑠璃香にお前はおれの一番じゃないってはっきり言ったんだ。それでもいいから、一緒にいたいって泣くんだ。そんな子ほっておけないよ。」

「そっか、」

「そのために、大事な子泣かせて傷つけて・・・おれって最低だよ!」

翔は、顔を手で覆った。

「ごめん。俺、そんなこと知らずにお前のこと殴って。」

「いや、当然の反応だよ。気にしてない。」



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