蒼い太陽
レガートやリリでさえ、初めて見る月の強大な魔力に大きな動揺を隠しきれないでいた。


そんなミシャやアヤト達を気に留めることもなく、フィリシアはようやくすっと瞳を開いた。

その紫の瞳はいつもに増してキラキラと輝いている。


銀色のオーラを纏ったまま、フィリシアが両腕を横に広げると、どこからともなくフワリと優しく風が舞い、銀色のオーラとゆらゆら混じり合い一つの銀色の風となった。


やがてそれはゆっくりとフィリシアの胸の前に集まり、複雑に絡まり合うと両手に収まる程の光り輝く球体となった。


その瞬間、フィリシアの胸元にある月水晶にピシッと大きなひびが走り、フィリシアの表情がぐっと曇る。


魔力を行使し過ぎたため、月水晶の限界が近いのだ。


ひびが入った影響で魔力を酷使しているフィリシアの体力が急激に奪われ始めたのだ。


「ダメ…もう少し…」


フィリシアは独り言のように唸った。


そんなフィリシアを誰も何も言わず、物音を立てることもなく、息をすることさえ忘れてしまったかのようにじっと見つめていた。


フィリシアが胸の前で光る球体に手を伸ばし、そっと包み込むように手をかざすと球体はパアッと眩い光りを放ち、その姿を剣へと変えた。


銀色に輝く、透明な細長い剣がフィリシアの胸の前でふわりと浮いていた。


「…剣。」


ミシャが呆然とフィリシアの創り出した剣を見て呟いた。


その表情は驚きと尊敬、恐怖が複雑に混ざり合ったような、戸惑いの色を呈していた。


ミシャの剣の柄を持つ手にぐっと力が入る。


フィリシアは少しの間じっと剣を見つめていたが、やがて覚悟を決めたように剣に腕を伸ばしその柄を取った。


剣はフィリシアの覚悟に答えるように再びパアッと眩しく光ると蒼く銀色に輝き始めた。


ついに、月水晶がパリンッと軽い音を立てて粉々に崩れ落ちた―――…


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