蒼い太陽
それからはまるで時間が止まってしまうのではないかと思える程、全てがゆっくりとして見えた。


蒼銀の風を纏う月族のフィリシアの剣と、漆黒の雷を纏う闇族のミシャの剣が衝突した瞬間、ミシャの雷は弾け飛び剣は剥き出しになった。


フィリシアの剣はそれでも勢いが衰えず、そのままミシャの剣を粉々に破壊してしまった。


フィリシアがハッとした時には既に遅く、剣はそのままミシャの胸へと向かった。


ゆっくり…全てがゆっくりにフィリシアには感じられた。


「避けて!!」


焦ったようにフィリシアが叫ぶも、ミシャは何故か…フッと、すっきりとした顔で微笑んでいた。


それは、闇族ではなく、太陽族のミシャだった…。






ザンッ!と鋭い音を立てて、フィリシアの剣はミシャの胸を引き裂いた。


途端、真っ赤な血が勢いよく噴き出す。


内臓にまで深く傷が走ったのであろう、ミシャは苦しそうに呻き声を挙げて口からも大量に吐血し、がっくりと膝から崩れ落ちた。


「っミシャ!!」


フィリシアが叫んだ。


急いでミシャの元へ走りミシャの上体を抱え起こす。


それとほぼ同時に、アヤト達も二人の傍に駆け寄ってきた。


ミシャの顔からは血の気が失せ真っ青だった。


浅く速い呼吸を繰り返しながら、虚ろになりそうな意識を必死に持ちこたえているようだった。


「は、早く止血を…」


フィリシアはミシャの胸元の傷に手をあて、どうすることも出来なくオロオロとしていた。


この時、自分に治癒の魔法が使えないことがどうしようもなく、悔しかった。


どうして、治癒は星族しか使えないのだろう…。


同じ、ヒトなのに。





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