蒼い太陽
「空間を渡らずとも、クエントに行くことは可能だ。

だが、ゼオのいる場には簡単に近づくことは出来ない。

奴の周りは闇の力で満ち、最も魔力の高い場にいるから誰も奴を見つけることができない。

奴に辿り着く前に己の中の闇に飲まれてしまうだろう。」


「だから、空間を裂いて行く必要があるのか?」


アヤトがレガートに尋ねた。


レガートはそうだ、と頷いて話を続ける。


「空間を裂き、ゼオのもとへ行くには闇の力が必要だ。

しかし闇の力のみで開いた空間は闇族の者しか受け入れない。
たから、闇の他にも力が必要だった。

星では足りない…太陽では光が強すぎて扉を破壊してしまう…ぼんやりと、それでも美しく闇夜に輝くような月の光が必要だった。」


「だ…から…、私はフィリシアの力…を血に混ぜた…」


ミシャが弱々しく補足した。


「だからってなんで、自分の命を賭けるような…!」


フィリシアは焦っていた。


何故か……考えたくもない、何故か………一番最悪な結果が頭を過ぎるのだ。


血が止まらない…!


「…せめてもの、償い…ってやつかな。」


と、ミシャは無理に笑顔を作った。


「もういい、ミシャ、喋るな…」


アヤトがフィリシアに上体だけ起こされているミシャに近づき、半ば懇願するようにそう言った。


「ごめん…アヤト」


ミシャがそう言った瞬間……








――フィリシアを取り巻く不安が現実になろうとしていた。







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