蒼い太陽
心にぽっかりと穴が開いたような気分だった。


何も考えることが出来ず、何故こんなにも気分が落ち込んでいるのだろうと思うこともあった。


そして、そう思った途端に中庭で起こった出来事がどっと押し寄せ、フィリシアに忘れることを許さなかった。


あの後、レガートは皆に一度休むように言った。


よく眠りなさい、と…。


ダリアはユウとリリに連れられて行った、目を…真っ赤に腫らしながら。


それからどうやって自分の部屋まで戻ってきたのか、フィリシアにはよく思い出せなかった。

足がふらつく度に、誰かが優しく肩を抱いてここまで導いてくれたような気がする…。


「キュイ…」


ベッドを背に膝を抱えて顔をうずめ床に座るフィリシアの肩で、キュイキュイが遠慮がちに鳴いた。


フィリシアの気持ちを察してか、大きな金の瞳を伏せ心配そうにしている。


肩にあるキュイキュイの温もりに、フィリシアは少しほっとする気持ちでいた。


…生きてる。


キュイキュイは、“生きている。”


そんな当たり前のことが、何故か恐ろしく感じられた。





どれほどそうしていただろう。

ふいに、ドアをノックする音が聞こえてきた。


フィリシアは反応しなかったが、代わりにキュイキュイがドアまで跳ねていった。


すると、ドアは音も立てずに開く。


「…フィリシア?」


アヤトが反応しないフィリシアに呼びかけた。


それでも反応しないフィリシアに近づき、フィリシアの目の前までくるとアヤトもあぐらをかいて座る。


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