蒼い太陽
「アヤト…」


そこでようやくフィリシアが顔を上げた。


涙は出ていないが、泣いているよりも辛そうなフィリシアがそこにいた。


「…寝てないのか。」


フィリシアの顔を見たアヤトがため息混じりに言った。


「私、知らなかった…創られたヒトが存在するなんて。

ミシャが…創られただなんて…」


自分に課せられた使命のために命をかけなくてはならない…


自分の意志では動くことが出来ない、そんなヒトがいるなんてフィリシアは聞いたことがなかった。


「使命…果たせないだけで…きえ…るなんて…」


フィリシアは最後の方まできちんと言う事が出来なかった。


目頭がじわりと熱くなり、涙が溢れ始めたからだ。


「…フィリシア…泣くな。」


アヤトが指でフィリシアの涙を優しく拭き取った。


「悲し…すぎるよ、こんなの、変だよ。」


一呼吸置いて、フィリシアが瞬きをすると同時に、大粒の涙がぽたりとアヤトの手の甲に落ちる。


「ミシャは…アヤトが…っ!」

そこまで言って、フィリシアは言葉を止めた。


気がついた時には、既にアヤトの腕の中で優しく抱きしめられていた。


「泣くなよ…フィリシア。」


アヤトの声はかすかに震えていた。


アヤトの肩に顔をうずめているため、アヤトがどんな顔をしているのかはわからないが、きっとアヤトも悲しい顔をしているのだろう。


アヤトの悲しみがフィリシアにもひしひしと伝わってくるようだった。


「ミシャは、アヤトが好きだった…」


アヤトの腕の中で、フィリシアが震える声で話し始めた。


「うん…」


「だから、ミシャはアヤトを貰うって私に言ったんだ。」


「うん…」


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