蒼い太陽
「だからだよ…」


アヤトの声が少し震えていた。

「相手はゼオだ。無傷で戻れるなんて思ってない。

俺は、俺が傷つくよりも…正直、太陽族や星族が傷つくよりも、お前が傷つく方が嫌なんだ。」


アヤトの声は小さく、それでもはっきりと伝わった。


どくんっと、フィリシアは心臓が強く波打つのを感じた。


一部ではレガートをも凌ぐと噂される程の強大な魔力と心を持ち、周りを寄せ付けない強い気配を持つアヤトが無傷では戻れないかもしれないと言った。


それだけ、闇族の国、クエントは危険なのだろう。


戦う相手が族長ともなればなおさら………それこそ、命の保障は無いのだ。


フィリシアはアヤトの背にそっと腕を回し、優しく抱きしめ返した。


「それでも…私は戦わなくてはならないんだ…」


族宝を取り戻す、それに月の長のことも何か解るかも知れない。


自分の夢に出てくる理由も、ようやくはっきりとするかも知れない。


「…」


アヤトは何も言わない。


アヤトにはフィリシアを止めることなど出来ないのだと、はじめから分かっていたのだろう。

「アヤト、ごめんね?でも、ありがとう。」


アヤトの腕の中で、フィリシアはふっと軽く微笑んだ。


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