コンビニ
仕事が終わると、今日で退職する太田に別れの挨拶を2課の全員でした。太田は少し泣いていた。柿崎は少し照れ臭そうだった。

その後、俺は片平に連れられ鳥吉へ。片平は明らかに俺と飲む事が目的では無かった。ただ単に鳥吉のバイトの子に会いたいだけだった。

いつものようにカウンター席へ。鳥吉の主人はにこやかに片平と話している。バイトの子を落とす為に主人の気を引く必要があるとは思えないが、片平は主人とここ数週間でかなり仲良くなっていた。

「ところでよ、お前どうだ?こっちは?」
小指を立てながら片平が言った。片平の顔は少し赤くなっていた。バイトの子が今日はいなかったので、少しヤケになって飲んでいた。

「別に…何も無いですよ」
内心少し彼女の事が気に掛かり、少々びびっていた。
「本当か?好きな奴くらいいるだろ?」
「いませんて!」
少し大きすぎる声で俺は否定した。
「ムキになってないか?」
片平がニヤつきながら俺の顔を覗き込むように言った。

「なってません。レバー冷めちゃいますよ」
俺は恋愛も下手だが、隠し事するのも下手だ。ポーカーフェイスなんて、絶対的に不可能。片平が酔っていなかったら、さぞかし怪しまれた事だろう。
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