コンビニ
片平が酔いつぶれた所で宴は幕を閉じた。タクシーに片平を任せ、俺はコンビニに寄った。何とそこに彼女がいた!

久しぶりに見た。やっぱりキレイだ。ふと、自分が酒臭い事に気付いた。その上焼き鳥の煙の臭いまで染み付いている。せめて口臭だけは何とかしようと思い、カバンの中に入っていた消臭効果のあるガムに頼る事にした。

しばらくコンビニの中をうろうろしていた。時々彼女の方に自然と目がいってしまう。何も買う気は無かったが、とりあえずおにぎりを手にした。

月曜日もバイトしてるんだな…。思えば、俺は君の事は何も知らない。君の名前、歳、出身、血液型、性格…分かっているのは、見た目と名字と声だけ。後は何も知らない。知りたくても知れない。聞けない…。

おにぎりを手にレジへ。もちろん彼女のレジ。
「タバコ下さい」
また吸いもしないタバコを頼んだ。彼女はまたどのタバコかを尋ねた。俺はまた前と同じ銘柄を言った。

お釣りを手渡された時、彼女の手が俺に触れた。その瞬間、俺の心臓は大きな音を立て、急加速した。

顔は紅潮した。自分でも分かった。鏡を見ずとも分かった。また俺は何も言えずにレジから離れた。

とてもじゃないが、彼女に話しかける余裕など無かった。しかし、今日会った事で俺はますます彼女への思いが募った。
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