コンビニ
読みもしない雑誌。興味も無い雑誌。その気も無く読む。何一つその時読んだ事は思い出せない。

とりあえず夜食のおにぎりとビールを買う事にした。その2つを持ってレジへ。彼女のいるレジへ。

皆夜食を買いに来たのか、退屈なだけか、客は結構いたが、偶然にもレジは空いていた。迷わず俺は彼女のレジへ。

「タバコ下さい」
俺はふと吸いもしないタバコを頼んだ。心臓の音が聞こえる。初めての感覚。理想の女性が今目の前にいる。すぐそばにいる。

「どのタバコですか?」
彼女が聞いてきた。声が聞けた。商売用と言うのか、明らかに地声では無い気がしたが、それでも彼女の声を聞いた。

タバコの種類など知らない俺は少し戸惑ったが、怪しまれたくなくて、聞いた事のある銘柄を言った。彼女はそれをビールとおにぎりの入った袋に入れた。

723円。俺は彼女に手渡した。その時、彼女の胸についていたネームプレートが見えた。

『内田』

名前を知った。内田って言うんだ。レジ袋とお釣りを両手で渡された。話をしようと思ったが、そんな勇気は無かった。

俺は恋に疎かった。女性とまともに話す事すら出来ない。
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